台本を読んでいると、自分の役の台詞に射抜かれる事があります。

背伸びしている爪先を払われたり、
張っている胸を突かれたり、
握っている拳の中を見透かされたり。

そんな時は、身動きが出来なくなってしまう。

でも、動かないわけには行きません。
だって、それは私の役。
私は、自らの口から、その台詞を発しなければならないのですから。

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そんな時は、深くまでいれます。
存在を知りながら、入りたくない部屋の奥まで。

その部屋に、役という名の彼と共に入り、別の扉を探します。

ズタズタに疲れるけれど、いつかは入らなければならないと分かっていたし、入ったというだけで、その台詞を発する事が出来る。

でも、今?

「お前は、今、俺に、その部屋へ入れと言うのか。」
そう思って、彼に憎しみさえ覚えました。

だけど、一緒に入ってくれたのも、共に探してくれたのも、出口を見つけてくれたのも、彼でした。
そして、部屋を作ったのは自分だと教えてくれたのも。



俳優業は、可笑しな仕事です。

自分だけでは出来ないけれど、自分だけでしか出来ない事もある。
そして、その事は、自分だけでしか出来ないけれど、自分だけでは出来ない。

自分の中の自分は、自分だけでは作れないから、きっと誰かが作ってくれた自分なのでしょう。


出来るなら、私も、誰かの中の誰かでありたい。


では、また。